前回まで、飛鳥時代までの日本の脱毛文化についてお話してきました。飛鳥時代の日本には、僧侶が使う法具としてカミソリが伝わってはいましたが、一般庶民には縁がなく、仏教の教えの中においての脱毛しかまだ生まれていませんでした。それから、250年余りが過ぎると、平安時代が訪れます。平安時代の訪れとともに、日本の脱毛文化や美容文化、美への価値観はどのように変わっていったのでしょうか？今回は、平安時代の脱毛文化についてお話ししていこうと思います。
【目次】
1.美容脱毛の始まり。平安時代といえばこれ！のあのヘアスタイルがきっかけ
2.除毛法は当時、毛抜きが基本だった！
3.今回のまとめ
美容脱毛の始まり。平安時代といえばこれ！のあのヘアスタイルがきっかけ
菅原道真の進言で、遣唐使が廃止されると、日本は鎖国のような状態になりました。そこから、日本独自の国風文化が広がっていきます。ここで、日本独自の美容としての「脱毛」の文化が花開くのです。当時の貴族女性は、「垂髪（すいはつ）」という髪型がスタンダードでした。黒髪を自分の身長ほどまで伸ばし、まっすぐおろすというスタイルで、百人一首や昔の絵巻物、教科書などで見たことのある「THE平安貴族女性」なあのスタイルです。貴族の女性は赤の他人の男性には顔を見せないのが当たり前で、会う時でさえ、御簾（みす）越しで、大きな扇子で顔を隠すのが女性の嗜みとされていました。そう言った風潮の中、美しさのシンボルとなったのが「髪の美しさ」でした。当時の美人の条件は、長くてボリュームのある黒髪でした。それも、十二単の裾よりも長く、扇のように広がっているロングヘアーが理想で、幼少期から手入れをしながら伸ばしていっていたようです。長さやボリュームに自信がない女性は、「かもじ」と呼ばれる付け毛を使って、長さとボリュームを足していたそうです。この頃からウィッグのようなものがあったなんて驚きですね！日々のお手入れは、侍女によるブラッシングでした。解き櫛で髪のほつれをほどき、米の研ぎ汁に浸した目の細かな梳ぎ櫛で髪を梳かして、埃などの汚れを取っていました。さらに、「澤（たく）」という香油を綿で浸して髪につけることで、艶髪を作っていたようです。仕上げに香をたいて、髪に香りをつけていました。当時は洗髪自体が年に数えるほどだったため、髪の臭いを誤魔化すのも理由の１つだったと考えられます。
除毛法は当時、毛抜きが基本だった！
25年から220年に起こった中国の古代王朝である後漢で編まれた辞書には、白髪を抜く道具として「鑷（ケヌキ）」が登場しました。その後、平安時代に編纂された「和名類聚抄（わみょうるいじゅしょう）」という辞書にも、「鑷（ケヌキ）」の項目があることから、平安時代に中国から毛抜きが伝わったことがわかります。当時の毛抜きは木製で作られたピンセットのようなものだったそうですが、その精度は良いとは言えず、抜きづらかったようです。平安時代の中期〜後期は、物語文学の最盛期でした。そんな物語文学の中からも当時の美容への価値観や、美容法、除毛ほうがうかがえます。かの有名な紫式部が書いた「源氏物語」では、後に光源氏の妻となる紫の君が10歳前後で眉を整えたことが記されていました。しかし、眉を整える行為は貴族の女性が行う特別なもので、まだまだ庶民には知られていませんでした。また、この時代は日記文学、随筆文学、歴史物語なども多く作られており、その中でも有名な清少納言の「枕草子」です。この随筆文学の代名詞である枕草子の中にも、「ありがたきもの毛のよく抜くるしろがねの毛抜き」という記述があり、平安時代の中期以降には既に金属製の毛抜きが使われていたことがわかります。
今回のまとめ
平安時代になってようやく、美容的な意味で毛の処理を始めました。しかし、枕草子にあった「ありがたきもの」とは、「滅多にないもの」という意味であり、「毛がよく抜ける銀の毛抜き」は滅多に手に入らない高級品であったことが分かります。そのため、毛抜きのよる脱毛は、上流階級の女性の嗜みとして長く行われていました。余談ですが、この後、飛鳥文化の頃は僧侶にしか広まっていなかった風呂文化も少しずつ庶民に広まりますが、今でいう温泉旅行のような一種の娯楽でした。しかし、この後、日本には火山が多く温泉が湧きやすいという環境から、次第に風呂文化が広まっていきます。このように、平安時代というのは、日本独自の文化の発展や、美への価値観が大きく変わった時代でした。次回は、鎌倉時代以降の脱毛の歴史をお話していきます。
福井脱毛エステティックサロンUNO>>>ichikara
中村真綾
